守はジーンズを脱ぎ、その下のトランクスも脱いだ。
薄いポリエステル製の下着を取り払い、現れた逸物は、豪儀に硬直していた。
仰向けに横たわったまま、依子が不安げに見つめてくる。
――ああ、見られてる。
守は少し恥ずかしくなった。依子に見られるのはなんだか特別な気がした。
ジーンズのポケットから財布を取り出す。その中から抜き出したのは、袋に入った薄いピンクの避妊具。
依子がそれを見て、眉を上げる。
「一応きちんとしとかないとね、こういうことは」
すると依子はなぜか苦笑いを浮かべた。複雑な面持ちと言えるだろうか。
そのまま体を起こす。脇に脱ぎ捨てられたパジャマに手を伸ばすと、普段ほとんど使うことのないだろうポケットを探った。
守が尋ねるのを制するように、依子は探り当てたものを突き出して見せた。
「……あれ?」
種類は違うが、守が財布から取り出したのと同じ物品だった。バラではなく箱だったが。
「……依澄さんが?」
依子が用意したとは思えなかった。少女はこくこくと頷く。
普段から常に用意しているわけじゃないだろう。昼間出かけているときに先を見越して購入してきたのだろうか。
もちろん依澄といえども未来予知ができるわけじゃないので、これもたまたまなのだろう。だが依澄にしては下世話な『お遊び』でも、きちんと後で意味を持ってくる辺りがさすがというかなんというか。
「神守に帰ったら、これでたくさん愛してあげるから」
「っ」
依子が微かに怯んだ。耳を真っ赤にしてうつむき、やがて小さく頷いた。
守は微笑むと、袋から避妊具を抜き取り、屹立した自分の逸物に装着した。
依子は自分から仰向けになった。生まれたままの姿の少女は、右手で胸を、左手で股間を隠して守をじっ、と見つめてくる。
守は膝立ちのまま、赤子のように這って近付く。
「依子ちゃん……」
白い両脚に手をかけ、横に開いた。軽い抵抗をあっさり押し退け、大事な箇所を目前に捉える。依子ももう目立った抵抗を見せなかった。
体を股の間に割り込ませ、怒張した肉棒を近付ける。繋がる直前というのは何度やっても緊張してしまう。
「ん……」
濡れた入り口を焦らすように肉棒で撫でると、依子が耐えきれないような喘ぎを洩らした。
今度こそ進入する。粘膜を擦り合わせて早く気持ちよくなりたいという欲望をこらえながら、ゆっくりと、ゆっくりと、亀頭を秘部の肉へと埋め込んでいく。
「んっ……」
苦しげな声が短く発された。守はそこで挿入を止める。
「大丈夫?」
「……」
返事はない。だが息を止めて歯を食い縛っている様子から、痛いであろうことは充分伝わってくる。
「力抜いて。入らないよ」
「……」
真上から声を落とすと、依子は駄々をこねるように首を振った。
「じゃあそれでいいよ。ちょっと乱暴になるけど、我慢してね」
下腹部をさらに押し込む。亀頭が未開拓の秘奥を切り開くように進んでいく。
依子の顔が苦痛の色を濃くした。声は抑えているが、どう見ても苦しそうだ。
徐々に肉棒全体が依子の中に埋まっていく。カタツムリが殻の中に閉じこもるように、ゆっくりと深く。
「…………」
涙目の依子が荒い呼吸と共にこちらを見上げた。まだだろうかと、もう限界のように瞳がぶれる。
「入ったよ」
「…………んっ」
必死で耐えるその様子は健気で、とても愛しく思った。
「今日は痛いだけかもしれないけど、何度も抱いて必ず気持ちよくさせてあげるからね」
耳元で囁くと、依子はぼんやりと口を開いた。
「……あ……これからも、するの……?」
「当たり前だよ。……言っとくけど、今すごく嬉しいんだからね。好きな娘を自分だけが独り占めしているんだから」
「……」
自分だけの、よりどころ。
「ずっとこうしたかったんだ。一回で済むわけがないよ。恋人として、これから君を何度も抱くから」
真剣に守は言った。
「こい……びと……」
かすれた声で虚空に呟く少女。
やがて嬉しそうに、とても嬉しそうに、依子は笑った。
「わたしも……いっしょかも」
「……その言葉、忘れないから」
守は微笑むと、腰を動かし始めた。
処女の膣は狭かった。先程あれだけ指でいじり回したにもかかわらず、棒を押し潰さんばかりに強い肉圧だった。
愛液で中はとろとろだが、その潤滑油が意味をなさないくらいにきつい。
見ると、何度か往復する中で血が滲み出してきていた。
痛いのも当然だった。今の依子に快楽は欠片もないだろう。ただ早く終わってほしいと願うだけかもしれない。
実際、依子は苦悶の表情で行為に耐えるだけだった。白い歯を噛みしめ、体を委ねて喘ぎ続ける。
だからといって、守は行為を早く終わらせたくはなかった。
力強い締め付けが射精を激しく促してくるが、恋人の肉壺を堪能し続けたいという思いがそれを拒んだ。
果てれば気持ちいいのはわかっている。しかしそこに到る過程をいつまでも味わっていたいという思いも同時にあり、往復をひたすら繰り返す。
「あ……んっ」
色っぽくも聞こえる依子の喘ぎ。たとえ苦痛の声でも、それは守の聴覚を簡単にとろかす。
……色っぽい?
「ん……あ……んっ、んんっ……あっ」
声に色が混じっている。締め付けは依然としてきついが、拒絶するような抵抗感はない。むしろ締め付けて離さないような。
(……感じてるのかな……?)
守は腰の動きを少しだけ速めた。
「ふあっ!」
それまでどこか抑え気味の声を洩らすばかりだった依子が、初めて大きな悲鳴を上げた。
「ごめんっ、痛かった?」
「……」
返事はなく、依子は落ち着きない呼吸を続けている。
はやとちりだったのだろう。守は乱暴にならないように腰の動きを再び抑えて、
「マモル……くん」
「……なに? どうかした?」
「……なにかヘンなの……」
「は?」
「痛いのに、痛くないの……頭がおかしくなりそうだよ……」
「…………」
守は一瞬呆気に取られて、思わず腰の動きを止めてしまった。
だがすぐに我に返ると、これまでよりも激しいピストンを打ち込み始めた。
「ひゃあ!? あんっ!」
間を置いた不意打ちに、依子は甲高い叫びを上げた。
「やっ、あんっ、……マモル、くんっ、激し……あっ、あんっ!」
もう無言ではいられないようで、最初よりもずっと大きく喘いだ。
守は抑えていた衝動を一気に緩めた。汗と液でまみれた色白の太股に、体当たりをするように腰をぶつけた。
ゴムに包まれた肉棒が奥まで突進する。根本まで完全に突き入れると、内側の肉がまとわり付くように蠕動した。
腰を引く。亀頭が出る寸前まで引き抜くと、襞々が引っ掛かって堪らない刺激を与えてくる。
再び奥まで貫く。すぐにまた引く。出し入れを重ね、互いの性器をゴム越しにひたすら擦り合わせた。摩擦でヒートしていく逸物は、まるで稼働中の電池のように熱かった。
目に映るのは必死に耐える恋人の姿。しかし、苦痛よりも快楽の色が強く見えるのは、守の錯覚ではないと思う。
守は腰の動きをさらに速めつつ、二つの胸の膨らみを鷲掴んだ。
「やっ……ダメっ」
乳首を人差し指の腹で撫で潰すと、依子は一際高く喘いだ。
執拗に柔らかい乳房を揉み回し、先っぽを刺激する。こねるたびにぴくぴく体が震えた。
守はもう全力だった。依子の体と声と匂いしか知覚できないくらい、行為に陶酔し、没頭した。
顔を近付け、胸から首筋に舌を這わせる。汗ばんだ肌の味はどこか背徳的な甘さがあった。
下から順にキスを贈る。胸、鎖骨、首筋、顎、頬、目元、鼻、額。とにかくあらゆるところに守は唇を添えた。
依子は揺れっぱなしの瞳を細めると、とても嬉しげな笑みを浮かべた。
「すき……だいすき……」
喘ぎと暖房の音に掻き消されてしまいそうな、そんなか細い声だった。
心どころか魂が締め付けられそうな程にゾクゾクした。愛しさが性欲を無茶苦茶に肥大させた。
守は依子の背中に両腕を回すと、ぐい、と抱き寄せるように持ち上げた。急に対面座位の体勢にさせられて、依子はひゃっ、と驚きの声を上げた。
「マ、マモルくん……?」
守は答えずに腰を突き上げた。
「あっ、いっ、」
これ以上入らないくらい深々と肉棒が突き刺さる。さすがに痛みが走ったか、依子は顔を苦くしかめる。
だが守は動くのをやめない。こんなに気持ちのいいこと、抑えられるわけがない。
「ふあっ、あんっ、やっ、やんっ、あ、あぁっ」
最奥に亀頭の先が当たる。粘液が割れ目から染み出て、桃色のゴムの根本まで垂れてきた。陰毛と蜜が絡み合い、部屋の明かりを受けて淫猥に光る。
守は歓喜する男性器の根本から先端まで、圧倒的な快感をむさぼるために意識をひたすらそれに傾けた。
避妊具を着けていてもまったく快感は阻害されない。依子の膣内の熱と感触はめまいがしそうな程に気持ちよく、もういつ射精してもおかしくなかった。
「マモルくん……マモルくん……」
うわ言のように依子は守の名を呟き続けた。守の首筋に両腕を回し、もたれかかるように上体を密着させてくる。
「あう……ダメ……」
力なく体を預ける依子。もう何も考えられないに違いない。突き上げられる肉柱に合わせて反射的に腰を動かすだけだった。
守はもう限界寸前だった。
守は高まってきた射精感を、ギリギリまで溜め込み我慢する。
この至福の時間はもう長くない。一秒でも長く、恍惚に浸っていたかった。
「あっ、んっ、あ、ひぅんっ、やあ……あんっ、ああっ……」
「依子ちゃん……もう……」
二人は至近で見つめ合い、互いに嬉しさと気持ちよさの入り混じった笑みを浮かべ合った。
欲望に覆い尽くされた男性器が激しく秘壺を掻き回す。女陰から愛液が飛沫となって散りそうな程に、二つの陰部は淫らに呼応した。
やがて、頭の中が白い閃光に埋め尽くされるような感覚と共に、守は絶頂を迎えた。
ゴムの中に精液が吐き出されると同時に、依子の体が感電したように揺れた。
震えはしばらくの間止まらず、依子は目を瞑って懸命に耐えていた。
徐々に互いの体から力が抜けていく。しなだれる少女の体を優しく抱きとめながら、守は萎れた肉棒を引き抜いた。表面を粘液が伝い、避妊具が微かに光を反射させて輝いていた。
二人は脱力した体を密着させたまま動かなかった。
ぼんやりと目線を交差させた状態で何も言わず、ただ抱き合うだけだった。直接肌の温もりを、目の前の息遣いを、心臓の鼓動を、たくさんの汗と一緒に感じ合っていた。
依子がにっこりと嬉しげな笑みを浮かべた。
守もつられて笑った。そしておもむろに顔を近付けて、優しいキスをした。
二人は抱き合ったまま、愛情を確かめるように唇を重ね続けていた。