「……」
それからしばらく、二人は動かなかった。
守は急速に高鳴る左胸にうろたえそうになる。
依子も同じなのか、固まった体を動かそうとはしなかった。だが、嫌がられているわけではないようだ。
少しだけ、手を動かしてみた。
「!」
依子の肩がびくりと強張る。守はそれに驚いて再び硬直した。
パジャマ越しに、少女の鼓動と温もりが伝わる。
「……」
「……」
暖房の音が小さくなっている。暖かい部屋の中で温かい感触を受けながら、守は唾を呑み込んだ。
不意に依子が口を開いた。
「……したい?」
一瞬何を言われたのかわからなかった。
「……何が?」
「……だから、……その」
言い淀む依子の様子に守は訝しむ。しかし、
「…………え!?」
「察してよすぐに……」
「いや、だって、それって」
守がその意味に気付かなかったのは、そういうこととは無縁なイメージを依子に抱いていたからだ。だからその言葉に、守は驚くしかなかった。
「いや、まあ、その」
「私は、別にいいよ……好き合った人同士なら、普通……だよね?」
「それは……そうだけど、でも」
「しないの?」
「あ、だって、まだ早いかもわからない、ていうか」
「……お姉ちゃんとはしたくせに」
驚きのあまり、思わず守は依子から体を離した。
上目遣いに守を見やる依子。
「……私とはダメなの?」
「いや、そんなことは……って、なんでそのこと」
「……お姉ちゃんに聞いた」
「…………」
秘密にしておこうと言ったのは依澄さんの方なのに。守は心の中でぼやく。
「……」
また静かな空間が出来上がる。
一言で言えば嬉しい。だがあまりに唐突すぎて、どう反応したものか戸惑いがあるのも事実だった。
前にも同じような場面に出くわしたことがあるが、今回は自分の想い人である。より強い緊張が心を縛るようだった。
依子が、今度は幾分はっきりと言った。
「……『別に』なんて言い方は、ダメだよね。……訂正。してくれる?」
「いや、無理しなくても」
「無理じゃないよ。本当に……してほしい」
頬をうっすらと染めながら、依子はゆっくりと、はっきりと言った。
「……」
守はしばらく黙っていたが、やがて盛大にため息をついた。
自分のへたれ加減に呆れた。好きな相手からの申し出なのだ。躊躇なんていらない。
守のため息に依子がつらそうに目を細めた。
「……ごめん。急に何言ってるんだろうね、私。マモルくんも困るよね、いきなりこんな」
「いいよ」
守が短く答えた。
「え?」
「……好きな人にそんなこと言われて、断ると思う?」
「……マモルくんならあるいは」
「いやいやいやいや」
どんなイメージですか依子さん。
「言っとくけどぼくも男だからね。君の脳内の遠藤守像を根底から覆すくらいに激しくするかもわかんないよ」
「う……」
たじろぐ依子。目元に若干不安の陰が浮いた。
「……どサド」
「大丈夫、優しくするから」
「いらない」
「いや、なんでそこで意地張るの」
「したいようにしてよ。私もそうするから」
依子はどこかふっきるように言うと、おもむろに身を寄せてきた。
守はもうためらわなかった。小さな体を抱き寄せると、その唇に自身のそれを重ねた。
抵抗はなかった。驚くような反応もなく、柔らかく受け止めてくれた。お風呂上がりのしっとりした髪から、優しい匂いがした。
「ん……」
みずみずしい感触に、守はたまらない気持ちになった。髪の香りが、体の温もりが、唇の感触が、こちらの興奮をあっという間に高めてくる。
体を離し、二人はしばし見つめ合った。
「脱ぐね……」
依子の小さな手がパジャマのボタンを一つ一つ外していく。守はそれをぼんやりと眺めていた。
シャツの下には何も着けていなかった。前立ての間から覗く胸の膨らみが際どく映える。
ボタンを外し終えると、依子はそこで手を止めた。
「マモルくんも脱いでよ……私だけなんて、恥ずかしい……」
「あ……うん」
慌てて守も自分の服に手をかける。黒のトレーナーを脱ぎ去ると、鍛えられた体が露になった。
「……それは?」
右脇腹に貼られた湿布に依子が眉をひそめた。守は肩をすくめて、
「昭宗さんに肘もらっちゃったからね。ちょっと痣になってて。でも大丈夫。折れてないし、すぐに治るよ」
「朝のやつ? 痛くないの」
「多少は。まあたいしたことないよ」
しかし依子の目から不安の色は消えない。
「……やっぱりやめる?」
「そんなこと、できると思う?」
「……」
「正直、早く君を抱きたい。脱がすよ?」
守が手を伸ばす。前立てに触れようとすると、依子の顔が強張った。
守はあえて無視して、そのままパジャマを剥いだ。
「……!」
上の裸身が完全に現れた瞬間、依子が両腕で胸を隠そうとした。しかし守はその手を掴んで赦さない。
発育のよい胸が目に飛び込んできた。巨乳という程ではないが、思わず掴みたくなってしまいそうな綺麗な形をしていた。
羞恥心に真っ赤になる少女。
守は依子をゆっくりと布団の上に押し倒す。胸を凝視すると、依子は恥ずかしさからか目を逸らす。
腕を離し、守は白い双房に触れてみた。
「……!」
反射的に力の入る体の中で、二つの膨らみの柔らかさは別格だった。まるで生クリームみたいにねっとりと柔らかい。
最初こそ抵抗の動きを見せたが、優しく揉み込んでいくうちに、依子は受け入れるように身じろぐのをやめた。
守は美しい胸を丁寧に揉み回す。乳肌はしっとりと吸い付くようで、手の平に驚く程フィットした。
(ちょっと信じられないな……)
今こうして触れていることは夢なのではないか。そんな疑いさえ抱いてしまう。
桃色の先端が固さを帯び始めてきた。少しは緊張も解けてきたのだろうか。
「依子ちゃん、気持ちいい?」
耳に触れそうな距離まで唇を近付けて囁く。形のいいその小さな耳に触りたいと思ったが、守は一旦抑える。
「……」
返事は返ってこなかった。ただ、震える顎を微かに上下させる。弱々しい頷きだった。
たまらない嗜虐心にとらわれて、守は喉をぐびりと鳴らした。
真っ赤になっている右の耳たぶを甘く噛む。不意打ち過ぎたか、依子は反射的に首をすくめた。
唇で挟むようにくわえ込み、舌で感触を味わう。柔らかい耳たぶを唾液で濡らしていくと、よりいっそう震えが強くなった。
耳を舐めながら右手で胸を愛撫する。乳首に指を這わせると、依子は小さく喘いだ。
「かわいいよ、依子ちゃん」
「……」
依子は答えない。
「下も脱がすよ」
ぼんやりとした目を何度かぱちくりさせる。しばらくして無言で頷くと、ズボンをゆっくり下げようとした。
守はそれを最後まで待てなかった。おずおずと下ろしていく依子の手を掴むと、自身の手でズボンをずり下ろした。
下着ごと一気に脱がすと、少女の隠された下半身が明かりの下にさらされた。
「――」
依子は困惑と羞恥で固まり、次の瞬間左手で股の部分を隠した。
何かに耐えるようにぎゅっ、と目をつぶっているその姿に、守は心臓が壊れるかと思った。
普段見られない幼馴染みの様子は、気が狂いそうなくらい新鮮でかわいい。
守は正直に言った。
「ごめん。ひょっとしたら優しくできないかも」
「……」
「できるだけ痛くないようにするけど、抑え効かないかもしれない。すごく……興奮してるから」
依子は無言だった。
それでも左手をゆっくりとずらし、下腹部がよく見えるように腰を気持ち程度浮かせた。続ける意思はあるらしい。
現れた陰部は、随分と小さく控え目に見えた。静梨や依澄のものとも違う、薄く綺麗な肉質だった。
守は股間に右手を差し入れると、秘部に指を這わせた。割れ目に沿って上下になぞると、ぴくぴく腰が動いた。
人差し指と中指で秘唇を撫であげる。誰も触ったことのないそこは、淡い綺麗な桃色を保っており、ここを今から征服するのかと思うと下半身が激しくうずいた。
割れ目を執拗になぞり続ける。依子は抵抗しない。こちらに気を遣っているのかおとなしくしている。それとは正反対に、指を縦に動かすたびに体だけが小刻みに反応した。
柔らかい感触をひたすら楽しんでいると、徐々に割れ目から液が漏れ出てきた。
感じてるかどうかはともかく、体は反応している。これなら多少大胆に攻めてもいいかもしれない。
指を、中に侵入させた。
「!」
瞬間、依子の体が一際大きく震えた。
守は耳元で、ためらい気味に囁く。
「依子ちゃんの体、触ってるだけで気持ちいいよ。だから……もっと触りたい。いいかな?」
返事はなかなか返ってこなかった。
十秒以上経過してから、ようやく微かな声で「ん……」と呟かれる。
頷きがなければ拒絶の声とも取れる声。
中指を膣の入り口に入れて、小さく抜き差しを繰り返す。始めは慣らすようにゆっくりと動かし、徐々に大きくかき回していく。
処女の秘壺は狭かった。だが中のぬめりは確実に増しており、指に淫水の熱さが伝わってくる。
「……、……っ」
依子は口をぎゅっ、と結んだまま懸命に耐えている。
「……ん……っ、……ッ!」
まともな声ではなく、唇の隙間から漏れ出る空気の塊のような声だった。意識的な言葉はなく、それはまるで依澄のようだと守は思った。
「依子ちゃん、ひょっとして緊張すると声出なくなるタイプ?」
「……」
図星らしい。依子は赤面したまま何も答えなかった。
締め付けが強くなった。中の肉が指に絡み付くように、ぎゅうぎゅうと締めてくる。
そんな膣中を守は容赦なくかき回した。まとわりつく愛液が小さく音を立てる。淫らな刺激音が耳に誘惑の歌を聴かせた。
依子はもはやろくに抵抗できない状態だった。いやいやをするように首を振っていたが、女唇をいじられていくうちにその動きはかき消されていった。
守は開きっぱなしの少女の口を自らのそれで塞いだ。
舌を絡め、唾液を塗り込み、口内をねっとりと犯す。丁寧なキスを送り込むと、依子の体はみるみるうちに弛緩していった。
呼吸が困難になる程濃厚なキスを続ける。右手は秘部をひたすらにかき混ぜ、左手は少女の背中を通って左胸を、ときに右胸を、執拗に揉みほぐした。
「ひぅ……っ、んっ……はぁ……っ、ん……」
処女とは思えない程、依子は淫らに乱れた。
「んんっ……う……ん……あ…………んっ」
きっと意識しての喘ぎではないだろう。声自体は小さく、部屋の外に洩れるかどうかも微妙なくらいだ。
だがその声は、青年の情欲の波を高々と煽るのには充分すぎる効果を持っていた。
依子の目に快楽の昂りが、薄く涙となって滲む。
このまま指でいじり続ければ絶頂を迎えるだろう。だがそれは少し寂しい気がした。やはり、一緒になりたい。繋がりたい。
守は膣穴から指を抜いた。愛液が指先にまとわりつき、秘部と透明な橋を作る。
依子が不思議そうに守を見やった。潤んだ瞳は切なげで、困ったような、苦しそうな顔だ。
「……イキそう?」
「……?」
恥ずかしがるかと思ったが、依子は表情をあまり大きく変えなかった。
怪訝に思い、守は尋ねた。
「ひょっとして、依子ちゃん何もしたことない?」
「……?」
いまいち伝わってないようで、守は言葉を選び、訊く。
「いや、だから、その……自分でいじったり、とか」
「!?」
ようやく理解できたようで、依子は驚いた後、みるみるうちに真っ赤になった。
慌てて首を振って否定する。顔はりんごみたいに赤い。
「じゃあイったこともないよね」
「……」
知識としては知っているかもしれない。だがその感覚は経験しないとわからないだろう。
「さっきぼくに触られてるとき、変な気分にならなかった? 意識が飛びそうになったりとか」
おずおずと頷く依子。
「その先に絶頂があるんだけど……一回指でイっとく?」
気を抜く意味でもそれがいいかもしれないと思う。本番できちんと感じられるかどうかはわからないし、痛いだけで終わったりしたら依子に悪い。
依子は首を振った。
「痛いかもよ?」
「……大丈夫……だよ」
かすれた声で微笑む。
「マモルくんも……気持ちよくなって……」
「……」
健気な言葉に守は背筋がぞくぞく、と震えるのを感じた。
嬉しさと愛しさが入り混じり、元々高まっていた興奮がさらに高まる。
「ありがとう。ぼくも頑張るから」
依子が微笑と共に頷いた。