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休日の過ごし方・3


 ぼくらは抱き合いながらぼくの部屋に入った。
 伊月さんの体をベッドに横たえると、ぼくは彼女の上に覆い被さった。
 抱き締めて、髪を撫でて、顔のいたるところにキスをする。唇に、鼻に、額に、目尻に、頬に、耳に、髪に、うなじに、愛情を送り込んだ。
 伊月さんはくすぐったそうに身をよじる。
「……青くんのキス、好き」
 うっとりと呟く伊月さんの顔は高揚したように赤みを帯びている。なんだか発情しているみたいだ。ぼくは軽く息を呑んだ。
 いつも伊月さんが主導権を握っていたので、こうして体を委ねてくるのは新鮮だった。
 本当にぼくの好きにしていいのだ。その事実がぼくを興奮させた。
 首筋から鎖骨に舌を這わせていくと、微かな喘ぎ声が耳元に届いた。パジャマのボタンを外して白い素肌に直接触れると、よりはっきりと声が洩れた。
 白のブラジャーが煽情的に脳を刺激する。高鳴る心臓に突き動かされるように剥ぎ取ると、形の良い綺麗な乳房がぼくの目を釘付けにした。
 誘惑するように揺れる胸を、半ば押さえ付けるように鷲掴む。
「んっ」
 色っぽい声がぼくの胸に染み込むように響く。マシュマロのように柔らかい感触が掌から脳に強烈な刺激として伝わってきた。
 乳首に吸い付くと、はっきりと体が震えた。
「やっ、あんっ」
 もちろん乳は出ないが、吸い付きたくなるのはたぶん男の本能みたいなものだ。それに気持ちよさそうな彼女の様子を見ると、もっと喘がせたいと思ってしまう。
 乳首を舌でチロチロと転がし、固くなっていく先端を甘噛みする。右手でもう一方の胸を丹念に揉み込みながら、指で先を押し潰す。
「乳首、勃起してるよ」
 せっかく主導権を握っているのだからと、らしくもなく意地悪く囁いてみる。
 伊月さんの顔が真っ赤になった。
「……青くんのどS」
「たまには、ね。気持ちよくない?」
「ううん、気持ちいい……もっといっぱいさわって……」
 両胸をしつこく何度も何度も揉みしだいた。白い肌がほのかに上気し、まるで熟れた果実のように桃色に変わる。こんなに柔らかいもの、どれだけ揉んでも絶対に飽きないと思う。
 伊月さんが脚をもじもじと動かすので、ぼくは名残惜しいながらも右手を離し、下のパンツの中に手を突っ込んだ。
 ショーツの中にまで右手を差し込み、股をまさぐる。ショーツはほとんどぐっしょりと濡れていて、まるでおもらしをしているみたいだった。
 もちろんそれは尿ではなくて、彼女の愛液だ。胸を揉まれて興奮したのだろうか。
 秘部に触れると、染み出した温かい液がくちゅりと音を立てた。
「……このまま挿れてもいいくらいだね」
 伊月さんが恥ずかしそうに顔を背ける。
 ぼくはその様子を少し怪訝に思った。
「本当に恥ずかしいの?」
「……どういう意味?」
「なんか、伊月さんらしくないというか」
 伊月さんはきょとんと目を丸くした。
「いつもの伊月さんなら、こういうことしてもあんまり恥ずかしがったりしないから。まさか演技してるわけじゃないよね」
 演技ならこちらのツボをよく突いてると思う。
 だが、伊月さんはそれを聞くと不満そうに顔をしかめた。
「……青くんの脳内では、いったいどんな仲村伊月像が描かれているのかな」
 ものすごく不機嫌そうに言われて、ぼくは自身の失言に気付いた。
「あ、いや、いつも余裕たっぷりだったから、その、」
「……私がするのと青くんにされるのとでは全然違うのっ!」
 真っ赤な顔で叫ぶ伊月さん。
「……攻められるのに慣れてないってこと?」
「だって、青くんいつもと違うんだもん。いつもはあんないじわる言わないのに」
 そんなに過激なことは言ってないつもりだが、なかなか効果があったらしい。
「嫌だった?」
「嫌じゃないけど、恥ずかしいよ……」
「こんなに濡れてるもんね」
 秘所の入口を強めに撫でると、伊月さんは「ひゃっ」と声を上げた。
「エッチしたくてうずうずしてるの?」
 中指を中まで進入させる。
「んっ、……それ、は」
 ほぐすようにかきまぜながら、膣の感触を楽しむ。
「エッチしたくて朝からずっと待ってたんだよね。セックスのためだけに早起きしてうちに来たんだもんね」
「ち、ちが──あんっ!」
 指の腹で側面を擦ると、びくりと体が震えた。
「違わないよ。さっきから挿れてほしくて脚動きっぱなしだもん」
「んっ、そんな、こと……」
 ぼくはこんなにSだっただろうか? 普段とは違うやり方のせいか、ドキドキ感が全然違う。
 伊月さんのあそこはもう全然弄る必要がない。愛液が洪水のように漏れ出てきて、中がひくひく痙攣するように動いている。
 指を引き抜いて、パンツとショーツをするすると脱がす。こもった雌の匂いが股の間から漂ってきて、こちらの雄の本能を刺激される。
「もう、いいよね?」
 伊月さんはこくりと頷き、
「……やっぱりダメ」
「…………えっ!?」
 完全に臨戦態勢だったぼくは、予想外の言葉に固まった。
 意地悪しすぎたかな?
「……え、なんで? だって今頷いたのに、」
「……」
 伊月さんはじっとこちらを見つめている。
 その目はなんだか不満気で、ぼくはなぜか慌てた。自分の至らなさを責められているような気がした。
 しかし理由はわからない。
「……ごめん、やっぱり意地悪しすぎたよね。慣れないことするものじゃ」
「違うの」
 伊月さんは首を振ると、ぼくの服に手をかけた。
 服?
「脱いでくれないと、直にくっつけないじゃない……」
「…………」
 ぼくは急いで服を脱ぎにかかった。


 仰向けになってこちらを見つめてくる伊月さんの体はどこもかしこも綺麗だった。ほくろ一つない白い肌に微かに浮く汗がやけに色っぽい。
「いれて……青くん」
 伊月さんの言葉に答える手間さえ惜しく、ぼくは一気に彼女の膣内に進入した。
「ああああっっ!!」
 嬌声が部屋に響いた。待ちに待っただろう逸物を、膣口から奥まで全体で締め上げてくる。危うく出そうになり、ぼくはなんとか力を込めてこらえた。
「い、伊月さん」
「ひさびさのあおくんだ……あおくぅん」
 陶酔したように甘い声を洩らす伊月さん。
 中の具合は液でとろとろで、伊月さんにまったく痛みはないようだ。しかし締め付けは精液を絞り取るかのようにきつく、どれだけ長く保たせられるだろうかとぼくは不安になった。気を抜くとあっという間に出てしまいそうだ。
「あおくん」
「な、なに?」
「ぎゅってして」
 両手を広げて期待の目を向けてくる。
 ぼくはゆっくりと伊月さんの上体を持ち上げて、抱き締めた。
「……」
「……」
 体が直に触れ合い、温もりが汗ばんだ肌を通して伝わってくる。
 性的な興奮とは別に、愛しい人の温もりにドキドキした。
 伊月さんは安心したようににっこりと微笑む。
「あおくん……だいすきだよ」
「……うん。ぼくも大好きだ」
 しばらく動かずに、ただくっついてお互いを確かめ合った。
「ドキドキしてるね」
「うん……そろそろうごいて」
「わかった」
 対面座位の体勢で、ぼくは腰を動かし始めた。
 相変わらず膣内は窮屈だ。絡み付く襞々の感触は性器が溶かされるような錯覚さえ受けて、下腹部全体に強烈に響く。
 しかし愛液の量がいつもより多いようで、案外スムーズに動ける。
「ん、あん……あ、おっき……あん」
 そんな意識はないだろうが、間近でそんな声を聞かされるともっと激しくしたくなる。
 緩慢な動きである程度慣らしていくと、ぼくにも少し余裕が生まれた。これならちょっとくらい激しく動いても大丈夫だろう。
 腰に手を回して文字通り本腰を入れた。
「きゃうっ」
 腰をぐいぐいと押し付けて膣内の感触を堪能する。硬い肉棒で内部をぐちゃぐちゃにかき回しにかかる。
「やっ! あっ、んんっ! あんっ! はげ、し……あっ、あぁん!」
 一際激しい嬌声が上がり、こちらの興奮を助長させる。
 たまらなく気持ちいい。
 この世の何よりも気持ちいいとさえ思える快感に、ぼくはただ溺れていく。
「あおく……んんっ」
 すぐ目の前にあるみずみずしい唇を奪う。
「ん……んちゅ、あむ……んん……」
 吸い付いたといった方が正しいくらいに夢中でキスをした。唾液でべたべたになるのも構わず舌を絡め合った。
 きつく抱き締め合うことで互いの胸が密着する。柔らかい感触の向こうに心臓の鼓動をはっきりと感じた。伊月さんもドキドキしているようだ。当たり前だろう。こんな行為、ドキドキしないでやれるわけがない。
 肉付きのいいおしりを鷲掴んで、さらに激しく腰を突き上げた。
「ふああっ! あんっ、あくっ、だめっ、やんっ、あっ、あっあっあっ、あぁっ!!」
 小刻みなリズムでひたすら腰を振る。亀頭が襞々に擦れて奥に突き当たる度に快感が生まれる。陰嚢の奥がどんどんむず痒くなっていく。
「あおくん、きもちいいのぉ……もっと、もっとして……」
「伊月さん……伊月さんっ」
「あんっ、あっ、やっ、あっあっあっあっ、あぁっ、だめっ、いく、いっちゃうっ」
 甲高い声に合わせるように射精感が高まっていく。
「いくよ、伊月さん! 中に出すよ!」
「うんっ、あおくん、きて、きてぇっ!」
 瞬間、限界が訪れた。
 引き絞られた矢が放たれるように、膣奥で精液が勢いよく噴き出た。
「ううっ!」
「あああっっ!!」
 伊月さんの絶頂の声が部屋中に響き渡った。
 精液と愛液が混ざり合う膣中で、ぼくは自分の性器を尚も動かし続ける。溜まりに溜まった精液を出し切るように、びくびくと性器が震えた。
「んん……」
 余韻に浸る伊月さんはぼくの体にしがみついて少しも離れない。
 荒い呼吸を繰り返しながら、ぼくらはしばらく繋がったままでいた。


 ようやく射精が止まり、気分が落ち着いてきた。
 逸物を引き抜こうとすると、伊月さんが腕に力を込めた。
「伊月さん?」
 ぼくは怪訝に思って尋ねる。
「離れないで……」
 絶頂を迎えて力が入らないのだろう。腕の力はどこか弱々しい。
 陰嚢の奥が再びうずいたような気がした。
「伊月さん」
「え? ……きゃあ!」
 中に挿さったままの肉棒をぐい、と突き動かすと、伊月さんは悲鳴を上げた。
「あ、青くん?」
「ごめん、またしたい」
 伊月さんはびっくりしたように目を丸くした。
「今日の青くん、すごいね……」
「ごめん、止まらなくて」
 伊月さんはクス、と小さく笑った。
 その笑みは子供のやることをしょうがないなあと許す母親のようで、しかしその奥には嬉しさがはっきりと見えるようで、
「……ううん、私もしたい。だから、たくさんして」
 本当に嬉しそうに、彼女は笑った。
 ぼくはごくりと生唾を呑んだ。
「伊月さんっ!」
「あっ」
 許可をもらった以上、もう我慢はできなかった。
 小さな悲鳴が上がるのにも構わず、ぼくは腰を振り始めた。
 伊月さんもそれに合わせるように体をリズミカルに動かす。
「あおくん、あん、あっ、あっあっ、あおくぅんっ」
「ふっ、ううっ」
 獣のように互いを求め合い、ぼくらはその夜何度も何度も愛し合った。

          ◇     ◇     ◇

 別に深い何かがあったわけじゃない。
 ずっと弟みたいな存在だった彼を見る目が、ちょっと変わっただけだ。
 高校の頃、初恋の先輩が他の女の子と付き合っていることを知って、少し淋しくなった。
 泣かなかった。嫉妬もなかった。ただ、告白できなかった自分が悔しかった。
 せめて想いを伝えられれば、それだけでよかったのに。
 そんな思いにとらわれているときに、ある男の子が言ったのだ。
『お姉ちゃん、元気出して』
 近所に住む男の子だった。よく一緒に遊んだ相手だったが、私が高校に上がってからはあまり会っていなかった。
 元気だよ、と答えると、彼は心配そうに顔を曇らせた。
『でも、淋しそうだよ』
 私は驚いて、しばらく彼の顔をまじまじと見つめてしまった。
 男の子は私の手を取った。
 私の手を包むにはその手は少し小さくて、けれどとても温かかった。
 昔遊んでいた頃は、私が彼の手を優しく握ってあげていたのに。
 私はその小さな手を、きゅっ、と握り返した。
 初めて私が彼に寄りかかった日──
「……たったそれだけのことだよ」
 横で眠る彼に言うでもなく、私は呟いた。
 その日からあなたを見る目が少し変わっただけ。
 手を握るときも意識が少し変わっただけ。
 特別って程のことはない。
 変わったのは唯一、私の心。
「大好き、だよ」
 私は彼の胸に寄り添い、かつてよりずっと大きくなった手を握った。
 温かい感触はどこまでも心地よかった。

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