十秒間の繋がりの後、二人は唇を離した。
「あっ」
亜季の首筋に雪成が舌を這わせた。
「ん、急に何するの」
「おいしそうだったから」
「ムード考えてよ」
「お前のことだけ考える」
「……もう」
頚動脈から喉辺りを強く吸われる。痕が残らないかちょっと心配になるが、今度は耳を甘噛みされてすぐに余裕はなくなった。
「ひゃあ!」
スカートが捲られた。右手が太股を大胆に撫で回してくる。
「やっ、ああ」
内腿から尻にかけて揉むように触られる。遠慮のない手つきについ声が出る。
指が下着の端にかかった。
「っ、」
するすると脱がされていく。着ているものを剥がされていく度に、どこか心許ない気持ちになって、亜季は再び体を強張らせた。
膝辺りまで下着が下ろされ、下半身が部屋の空気にさらされた。
そして、
「──んっ!」
脚の間、一番大事な部分に右手が触れる。指で縦になぞられて、亜季は目をつぶる。
「ちょっと濡れてるな」
不意に耳元で囁かれて、瞬間的に頭が沸騰した。
「バ、バカぁ!」
「おっと、暴れるなよ?」
軽く頬に口付けされる。それからまた指が動いた。
割れ目を優しく撫でられる。他人に許したことのない部位を預けるのはかなり緊張するが、同時に襲う快感がそれを上回る。
くちゅ、と微かに水音がした。
(は、恥ずかしい……)
羞恥と快感が入り混じる中、雪成の指は止まらない。
ゆっくり慣らすようになぞられる。次第に湿り気が増していくのを自覚する。
やがて、指が膣の中に侵入した。
「ああっ!」
亜季の叫びに雪成は眉をひそめる。
「ひょっとして、自分でいじったことないのか?」
「え? な、い、いじるって」
「ないのか。道理で妙に狭いと思った」
苦笑いする彼氏に、亜季はばつの悪い顔をする。
「やりにくい?」
「なんだそりゃ」
「だって、慣れてる方が楽なんじゃないの?」
「さあ」
雪成はそっけなく返す。
「はっきり言ってよ」
「知るかよ。お前以外の女なんて知らないんだから、やりにくいも何もあるか」
亜季は目を丸くした。
「……雪成くんも初めてなの?」
「……悪かったな」
「だ、だって、さっきからあんなに気持ちよくしてくれるからてっきり……あ」
失言だった。
雪成が嬉しそうに笑う。
「そっか、気持ちよかったのか」
「や、その、」
「これからもっと気持ちよくしてやる」
赤面する亜季の耳に口付けると、雪成は右手をゆっくり動かした。
人差し指が膣内をほぐしていく。入り口から徐々に奥へと潜り込んでいき、内側から肉を外へと拡げていく。
「ああ……やぁ……」
亜季は新たな感覚に体を震わせた。
大事な人に大事なところをいじられている。その事実だけでもたまらないのに、性的な快感が強烈に脳を揺さぶってくる。
「あんっ、あっ、ああっ、」
声を抑えることもできない。陰部への刺激に亜季は理性を保てなくなりそうだった。
雪成は亜季の様子を伺いながら、今度は中指も一緒に入れてきた。
二本の指は案外すんなりと入った。濡れすぼった秘壺をぐちゅ、ぐちゅ、とかき回されて、亜季はたまらず叫声を上げた。
「ふぁあっ! あんっ、ゆきなりくん、そんな……ああっ!」
「そんなに喘ぐなよ。抑え利かなくなるだろ」
「そんなこといわれても……はぁんっ」
亜季は頭を振って堪えようとするが、雪成の容赦ない攻めの前に陥落寸前だった。
中指の腹が膣内の側面を小刻みに擦り上げてくる。亜季は幼馴染みの指の感触に絶頂を迎えてしまいそうになる。
しかし、その寸前で雪成の指が引き抜かれた。
「んんっ……え?」
突如引いていく波に亜季は戸惑いを隠せない。
雪成は体をゆっくりと起こした。二人の間に空間ができる。
数十センチの距離を隔てて、亜季の視界には雪成の上体がはっきりと映っている。
亜季は消え去った快感に不満の目を向けようとした。しかし雪成がずいぶんと真剣な目をしていたので、途中でやめる。
いや真剣と言うより、なんだか余裕がないような──
「もう入れたい。いいか?」
声がどこか焦っているように聞こえる。
亜季は頷きかけて──首を振った。
「……その前に、雪成くんも服脱いで」
雪成はきょとんとなる。
「……そういえばまだ着たままだったな」
素で忘れていたようで、亜季は呆れのため息をつく。それだけ没頭していたということか。
「ちょっと待っててくれ」
雪成は急いで服を脱いでいく。長袖シャツを捲り上げると、筋肉質な体が姿を現した。
次いでジーンズも脱ぎ捨てる。ベルトの金属音がカチャカチャと、焦るように鳴り響く。
雪成が目の前で服を脱ぐなんて小学生のとき以来である。なんだか懐かしいと同時にこそばゆい嬉しさを亜季は覚えた。
何でもないことなのかもしれないけど、改めてちゃんと近くにいるんだ、という気がした。
トランクス一枚になった幼馴染みを、亜季はぼんやり見つめる。
「な、なんだよ」
雪成の狼狽する様子がなんだかおかしい。
「だって……」
亜季の目は正面にあるものをしっかり捉えている。雪成の下腹部、トランクスの真ん中の膨らみをじっと注視している。
「あんまり見つめるなよ」
「雪成くんだってジロジロ見たじゃない」
「……」
急に恥ずかしくなったのか、雪成はトランクスを脱ぐのを躊躇した。
亜季は目の前の膨らみに腕を伸ばす。
「あ、亜季!?」
無視してトランクスをずり下ろす。途中、逞しい突起物に引っ掛かるが、硬直したそれをうまく外して、亜季は下着を膝下まで脱がした。
ついにというべきか、現れた男根は亜季の想像以上に大きかった。自分の指よりもずっと長く、太い。
亜季の視線に照れたのか、雪成は顔をしかめた。
「……」
亜季は沈黙。
「……何か言えよ」
「……へ? あ、う、うん」
「気持ち悪いか?」
「そんなことないよ。ただ……」
「ただ?」
「……これが私の中に入るんだなって思うと、なんか不思議な感じで」
「……不思議って」
亜季は照れを隠すようにはにかんだ。
「今から私たち、その、……えっち、するんだよね?」
「……ああ」
亜季は小さく深呼吸をすると、姿勢を正して改めて雪成に向き直った。
「優しくしてとは言わない。雪成くんのしたいようにして下さい」
柔らかく亜季は微笑む。
雪成は微かに眉を寄せた。
「それは、俺のためか?」
「私のためだよ。私の『頼み事』」
「……わかった。じゃあ俺は俺のために、お前をできるだけ優しく抱く」
亜季は笑みを深めた。
「ホント、ひねくれてるね」
「うるさいな」
「ううん、それが雪成くんだもの。私が知ってる、優しいひねくれやさん」
そういう人を好きになったのだ。素直じゃないけど、誰よりも亜季を大切に想ってくれる優しい幼馴染みを。
抱くぞ、と囁かれ、亜季は仰向けに倒れ込んだ。