裸になった二人は、互いの体に目をやり、同時に恥ずかしそうに笑った。
「あ、あの、私、初めてではないんですけど、実質初めてというか、その」
「気にしないで。ぼくも初めてだから」
静梨が目を丸くする。
「意外だった?」
「は、はい、少し」
「うまく出来ないかもしれないけど、頑張るから」
「私も、頑張ります」
守は静梨を抱き寄せると、ぎこちなくキスをした。
始めはソフトに唇を合わせる。ついばむように、何度もタッチする。
頬や鼻、額、耳と、頭の至るところにキスをした。くすぐったそうに目を瞑る静梨に、至近で微笑みかける。
今度は長く接吻を続ける。深く押し込むように口唇を合わせると、静梨の腕が強くしがみついてきた。
二人は抱き合ったままベッドに倒れ込む。勢いでスプリングが軋んだ。
唇から舌を伸ばし、静梨の口中に潜り込む。すぐに相手の舌を見つけ、つがいのように絡みつく。
守は上から息を奪うかのように覆い被さる。静梨はそれを受け入れ、震える体を下から密着させるために、抱きつく腕に力を込めた。
「んん……んむぅ……んちゅ、はぁっ──ひゃぁ!」
唇が離れた瞬間奇声が上がった。
「ど、どうしたの? どっか痛かった?」
「い、いえ、その……脚に固いのが、」
言われて下を見る。勃起した逸物が柔らかい太股の肉を押し潰していた。
「あ……あの、これは」
「こ、興奮してるんですよね」
「えっとまあ……うん、そういうことみたい」
顔がほてる。互いに慣れてないのもあるが、女の子相手にこんな直接的な話題は、結構恥ずかしい。
「続き、しましょう」
「……うん」
下半身を気にしながら守はまた唇を重ねる。
柔らかい肉感は頭を揺さぶった。果実のような甘い匂いが鼻孔をくすぐり、若い情欲を昂らせる。
互いの唾液が混じり合い、生々しい温度が伝わってくる。口の中は二人の液でぐちゅぐちゅで、たまらなく意識を陶酔させた。
「また大きく……んむぅ……」
相手の口を塞いで、言葉を途切らす。体を寄せ、逸物を押し付けた。それだけでも十分気持ちいい。
長いディープキスを終えると、今度は彼女の胸に目を向けた。視線に気付き、静梨がうめく。
「あんまり大きくないですけど……」
確かに大きいとは言えなかった。ないとは言わないが、膨らみは控え目で小振りだった。
「……がっかりしました?」
不安な声で下から窺ってくる静梨に、守は行動で返した。
「きゃうっ」
両胸を左右の掌で鷲掴む。それだけで乳房は手の中に収まってしまったが、餅のような弾力感が皮膚に返ってくる。
薄くても柔らかいものは柔らかい。ほくろ一つない綺麗な柔肌の中でも、おとなしい双丘の柔らかさは群を抜いていた。
「ん……あっ」
こそばゆいのか、静梨は体をもじもじさせる。
「柔らかい」
「そう……ですか?」
「ちょっと我慢出来なくなりそう。早く入れたい」
「あう……」
真っ赤になる静梨。
左の乳首に唇を這わせた。
「ふあっ!」
強張る肩を押さえ込み、口の中でちろちろと舐める。舌に固い感触が伝わり、さらに興奮を煽った。
左だけでなく右の方も指先で摘み、押し潰す。柔らかい感触が徐々にこりこりと硬くなる。
「ひ……ふうん……、あっ、うんっ……」
可愛らしい喘ぎ声が口の隙間から漏れ出し、少女の体が悩ましげにくねる。
「気持ちいい?」
「はい……頭がぼうっとしてしまいます」
「じゃあここは?」
守の手が静梨の股間に伸びた。
が、
「やっ!」
大きな悲鳴とともに、守は突き飛ばされた。
無意識だったのだろう。静梨本人がショックを受けた顔で呆然となっていた。
「ち、違うんです。今のは」
「わかってる。……怖い?」
尋ねると、静梨はうなだれた。
「守さんなら大丈夫だと思ったんですけど……やっぱり、ちょっと……」
「じゃあしばらくこっちに集中していて」
え、と上げたその顔の口に、守は唇を寄せた。
急なキスに少女は驚いたようだが、すぐに集中して目を瞑った。
もう一度、股間に手を伸ばす。
触れた瞬間静梨の体に緊張が走ったが、今度は暴れたりしなかった。恐怖感を与えないよう慎重に秘所を探る。
秘唇は既に濡れていた。
唇や胸をさんざんなぶったせいだろうか。愛液が割れ目から漏れ出ている。
急速に繋がりたい衝動に駆られた。しかしそれはまだ早い。せめて局部をいじられても抵抗しないくらいには慣れさせなければ。
表面の割れ目をなぞる。縦に指を往復させると、静梨はびくりと震えた。
唇を離し、守は訊いた。
「どう?」
静梨は顔を上気させ、
「変な……感じです。でも……嫌じゃありません」
「気持ちいいんだ?」
「それは……あっ」
人差し指を中に侵入させた瞬間、短い悲鳴を上げた。しかしその響きに不快の色はない。
内襞を指先で擦り上げる。狭い膣の中に指を入れるだけでもきついが、第一関節を折り曲げて側襞を擦ると強烈な締め付けが生じた。
「あっ、あっ、あっ、ダメ、そんな、ぁっ」
色っぽい叫声が部屋に響く。
それでもやめずに擦り続けると、愛液が次々と溢れ、下のシーツを濡らした。
もう十分ほぐれたようだ。これなら挿入しても問題ないだろう。多分。
守は指を抜くと、耳元に顔を近付けた。
「静梨ちゃん、いいかな?」
静梨は潤んだ瞳を愛しい相手に向けて、小さな声で呟いた。
「どうぞ、来て下さい……」
ゴムに包まれた肉棒を秘所に当てる。
静梨の顔に怯えの色が浮いた。
「大丈夫」
一言だけ囁く。
「……はい」
信頼に満ちた笑顔。
綺麗な笑顔だ。昨日まで知らなかった顔がそこにある。
静梨は言った。守のことが大好きだと。守の目が他の人に向けられていることを知っていて、それでも好きだと。
確かにそうだったが、守は静梨のことも好きなのだ。だから今日だけは優先順位を忘れて、この娘を真剣に愛したい。守はそう思った。
腰を深く突き出す。うまく入らない。
二度失敗して守は焦った。まずい。これ以上待たせたらまた怯えさせてしまう。
「守さん」
その声にどきりとしたが、静梨は微笑んだままだ。
「あなたが目の前にいるだけで、私、怖くないんです。だから、焦らず来て下さい」
「静梨ちゃん……」
息を吐く。焦った気を落ち着かせる。
三度目の挿入。今度は大丈夫だ。ちゃんと入っていく。
入り口が切り裂かれるように開いていく。亀頭を愛液と肉襞の感触が包む。
「ん……くぅ」
静梨の顔が歪む。痛むのか、苦しげな呼気が生まれては消える。
締め付けが、敏感な性器を強烈に刺激する中、守は一息に奥まで突き入れた。
「ふああっ!」
静梨の一際高い悲鳴が虚空へと放たれた。
「い、痛かった?」
涙目で首を振る。
「い、いえ、いきなりだったから……痛くはないです」
「……しばらくこのままで」
「遠慮しないで。おもいっきり、来て」
健気な言葉を守は嬉しく感じた。
腰をゆっくり引いていく。襞々が引っ掛かるように擦れて、体験したことのない気持ちよさが意識を襲った。
次は逆に押し進める。熱い肉の締まりが先端から中ほどまでを圧迫する。
なんと不思議な行為なのだろう。守は陶酔感に満ちた頭で、自らが夢中になっている行為を思う。腰を前後にセンチ単位で動かすだけの単純な動作に、どうしてこれほどの快楽がありうるのか。
「ん……ん、んうっ、あ、あんっ」
抽挿が激しくなるに連れて、静梨の喘ぎが大きくなった。苦痛ではなく、快楽に染まった声。その声が一層守のギアを上げる。
「やっ、はげし……っ、あんっ……あっ、あっ、んっ、んうっ、あっ、あんんっ!」
声が理性の外に飛び出すように乱れる。守は一心不乱に腰を打ち付け、これでもか、これでもかと膣内を蹂躙する。
「静梨ちゃん、好きだ」
行為の中で口をついた台詞に、静梨は掠れた声を返した。
「ありが……とう。でも、んっ、わたしはいち、ばんじゃな、あっ」
「順番なんて関係ないよ」
静梨は呆気に取られる。
「今は、今だけは、ぼくは君のものだし、君は……ぼくのものだ。誰にも渡さない」
「……嬉しいです」
「ぼくも嬉しい。君に想われていることが」
また一段と腰の動きが速くなった。子宮の奥にまで突き入れるかのように逸物をひたすら往復させる。
静梨は守の体にしがみついて、快楽の波にひたすら耐えている。頭の中を巡る脳内麻薬は通常量の遥か上だった。
「まもるさ、わたし、もう──」
「ぼくももう限界だよ……」
ゴム越しに伝わる蠕動が終わりへと導く。射精感が一秒ごとに高まっていく。
そして、
「や、ああっっ」
絶頂を迎えた静梨が、苦痛にも似た歓喜の声を上げた。
そのすぐ後に、守も果てを迎える。
「ううっ、くっ」
低いうめきとともに、薄い膜の中に白濁液を吐き出す。
次々とぶちまけられる精液。その勢いが衰えるに連れて、虚脱感が全身を包んだ。
静梨は口を半開きにしながら、呆然と虚空を眺めている。
視線が合い、二人はこの世の何よりも近しく笑い合った。
連帯感と満足感がベッドの上を温かく覆うようだった。
「守さん……」
静梨の呼び掛けに守は振り向いた。紅茶を注ぐ手を止め、裸の少女を見つめる。
「何?」
静梨の顔には疲労の色が濃い。今日はゆっくり休んでもらって、明日の朝、家に送ろうと思う。
「事件のことなんですけど……」
「え? ……ああ、もういいよ。静梨ちゃんの声も笑顔も戻ったし、あとは警察に任せて、」
「違うんです。私、まだ誰にも言ってないことがあるんです」
「?」
真剣な口調の静梨に守は首を傾げた。
「森嶋くんのことなんです」
「……彼が、どうしたの?」
静梨は一つ息をつくと、ゆっくりと話し出した。