正鵠を射るために・2(6)
◇ ◇ ◇
服を着替えて布団をたたんでいると、彼が目を覚ました。
「おはよう、修一くん」
「……おはようございます」
寝ぼけ眼をこすりながら、ぼんやりとした声で返事をする。
私はその様子に笑った。
あれから半年。
私は日常に帰ってきた。
秋の半ばごろに退院して、学校にも再び通えるようになった。
弓道場で迎えてくれた部員たちは、一様に私の退院を喜んでくれた。
伊代も、こよみも、とてもうれしそうだった。
その中で修一くんも控えめな笑顔を浮かべていた。しかし心から喜んでくれていることは十分伝わってきて、私も自然と笑みがこぼれた。
ここからまた新しく始まるのだと、そのときの私は万感の思いを胸に秘めていた。
それなのに。
「昨日はすまなかった」
着替えを済ませた彼に、私は頭を下げた。
悪いのは私なのだ。彼はただ、私にあこがれて、その期待をまっすぐ私に向けていただけ。
それに応えることのできない、私が悪いのだ。
「……謝られても困ります」
修一くんは首を振った。
「俺にはわからないんです。だって、一度はちゃんと戻ってきてくれたじゃないですか。あのときはみんなで喜んで、先輩だってうれしそうにしていた。なのに、どうしてまた来なくなってしまったのか、それがどうしてもわからないんです。昨日は体調と気持ちを理由に挙げてましたけど、それだけが理由じゃないんじゃないですか? あれから悪化したわけでもないんですから」
そう言う修一くんは、あの夏の日から変わらない、まっすぐな目をしていた。
そう、私の体調は悪化していない。
今でも薬を飲んでいて、体調は安定している。多少不便を抱えながらも、日常生活に大きな支障はない。
彼が不可解に思うのも、無理はない。
その目に応えてあげたいのは、本当なのだけど。
「……どうして私は弓道を好きになってしまったんだろうね」
彼の顔に戸惑いが生まれた。
「他のスポーツや武道なら、もっとやりようはあったかもしれないのにね。なんでよりにもよって……弓道じゃなかったら、こんなに悩むこともなかったのに」
「……何を……言ってるんですか?」
その疑問に答えたくはない。
こんなこと、誰に言えるだろう。
私はもう二度と、元の射を取り戻すことはできないのだと――。