◇ ◇ ◇
目が覚めた瞬間、由樹は何が起こっているのかまるでわからなかった。
依澄が自分にキスをしている。
なぜ? どうして? 混乱する頭に、しかし心地よい異性の感触が響いてくる。
夢でも見ているのか。まさか人工呼吸とか?
腕を動かそうとしたが、痺れたように動かない。全身が鉛のように重く、由樹は抵抗できない。
依澄はその間も深く唇を重ねてくる。
舌が口内に入ってきた。ねっとりと柔らかく温かい感触は、不思議と安心できた。
体の重みが取れていく。視界も明瞭になっていき、由樹は現状を把握する。
広い和室の真ん中、敷かれた布団の上で由樹は横になっている。
依澄はなぜか裸だった。真っ白な柔肌を隠そうともせず、由樹の上にかぶさってくる。
唇がようやく離れた。のぼせたように赤く上気した依澄の顔が色っぽい。
「神守さん……これは」
「依澄、と……そうお呼び下さい」
「な……いや、そうじゃなくて」
「動かないで」
静かな声で囁かれて、由樹は身じろぐのをやめる。
少し恥ずかしそうにしているのを見ると、つまりそういう意味なのだろうか。
「どうして?」
「……」
依澄は答えない。
意味がわからない。
由樹は身を起こそうとした。しかし依澄に両肩を押さえ付けられる。
「神……依澄さん」
「……」
依澄は微かに逡巡した様子を見せた。それが何を意味するのか由樹にはわからないが、それでも彼女が真剣だということはわかった。
だからといって納得したわけではない。
再度起き上がろうと力を込めると、依澄が先に口を開いた。
『動かないで』
瞬間、由樹の体は金縛りに遭ったように動かなくなった。
「!?」
由樹は突然の出来事に慌てた。
重くはない。ただ、意識の奥に強迫観念のような感覚が生まれて、体を動かそうと思えなくなっていることに気付いた。
体を動かすことから意識を遠ざけるような、そんな彼女の言葉。
どうすればいいのだろう。このまま身を委ねていいものかどうか。
そのとき、依澄が言った。
「あなたを、助けたいのです……。どうか信じてください」
小さな細々とした声だった。しかし彼女の真剣な眼差しが拒絶をさせなかった。
「……助ける?」
依澄は頷くと、由樹の股間を撫でさすった。
くすぐったい感触に由樹は体を震わせる。
ボタンが外され、ジッパーが下ろされる。由樹は身動きできない。
ジーンズをトランクスごと脱がされると、軽く勃起した逸物が現れた。
依澄はそれを確認すると、その部分にゆっくり顔を近付けた。
「い、依澄さん」
由樹は慌てる。こんな綺麗な人がまさか、
「ううっ」
柔らかい手指が根本を握り、美しい唇が先っぽをそっとくわえた。由樹は思わず声を洩らした。
そのまま口の中で亀頭を舐められる。鈴口に舌のぬめった感触が広がる。
「ん……」
依澄は目をつぶり、行為に没頭する。舌を細かく動かし、唾液を塗りたくるように逸物をなぶった。
ちろちろと舐められる感触に由樹は呻くことしかできない。
「うぅ……」
依澄の口が徐々に由樹を呑み込んでいく。まるで蛇のように、大きく膨れた肉棒を口腔の奥へと送り込んでいく。
軽く歯が当たり由樹は痛みを覚えた。気付いた依澄はすぐに口使いを修正する。
決して巧くはない。おそらくほとんど経験はないのだろう。ひょっとしたら初めてかもしれない。そう思うとここまでしてくれる依澄に罪悪感と、同時に興奮を覚えた。
肉棒が完全に口内に呑み込まれた。
依澄はそこで小さく息を整えると、口を上下に動かし始めた。
すぼまった唇が男性器を愛撫する。
唾液と口内の熱が焼くように下腹部を刺激する。加えて唇と舌がまとわりつくようになぶって、疲労感のある体にひどく気持ちいい。
由樹は荒い息を吐き出しながら快感に身を委ねる。
「は、ぁ……い、依澄さん、すごく、いい、よ」
「んむ、ん……ん……」
先走る液と唾液が混じり合い、ぬめりが増していく。
まるで溶かされるような、食べられるような心地だった。
次第に高まっていく快感。さっきからがちがちに硬くなっている。由樹はもうすぐ来るであろう絶頂を強く意識する。
が、達する前に依澄の口が離れた。
「うあ……?」
唐突に快感が途切れて由樹は呆けた声を出す。
依澄は口から垂れた唾を指ですくい、舐め取った。それから濡れた指を自身の股間に伸ばし、弄り始めた。
くちゅ、くちゅ、と卑隈な音を立てながら、依澄は頬を赤く染める。
その姿はひどくなまめかしく、由樹は酔いそうになった。いや、既にもう酔っているのかもしれない。さっきからまばたきもできずに目を奪われてしまっている。
依澄は秘所から指を離すと、由樹の上にまたがった。
本当にするのだろうか。股間を硬くしながらも、由樹はまだどこかで迷っていた。
だが、もう止められない。
どれだけ疑問に思っても、心はもう彼女の美しさに囚われている。
依澄がゆっくり腰を下ろしてくる。性器同士が直接触れ合う。
そして由樹は、彼女の中に包まれた。
「はあ……っ」
依澄の表情が苦しげに歪んだ。
依澄の中はとてもきつかった。入ったのが不思議なくらい狭く、由樹は痛みにも近い強烈な圧力を受けた。
(初めて……なのかな)
血は出ていない。
それでも依澄の様子を見るに、快感より苦痛の方が強いのは確かなようだ。明らかに経験不足である。
(なのに……なんでこんなに気持ちいいんだ?)
申し訳なく思いながらも、由樹の逸物は依澄の感触に歓喜していた。まだ入っているだけなのに、膣が全体を程よく締め付けてくるのだ。
これで動いたらどうなるのだろう。下半身がうずく。
もっと快感を得たい。快楽に溺れたい。由樹は自分でも不思議なくらい欲望に呑まれていく。
いつの間にか体を動かせるようになっていた。由樹は依澄の腰を掴むと、奥に向かって勢いよく突き上げた。
「あっ……」
依澄の口から嬌声がこぼれた。
痛み以外の感覚がそこには見えた。人形のように無機質な顔に、はっきりと感情が表れている。由樹は嬉しくなって動きを強める。
「んん……っ、あっ……」
長い髪を振り乱して声を上げる依澄。
由樹は目の前の真っ白な胸に手を伸ばした。柔らかい感触を味わいながら、腰をぐいぐい動かす。押し付けるように奥にぶつけると、収縮して締め上げてくる。
こんなに快楽に陶酔したことがあっただろうか。
由樹の中で弾けそうなほど性感が高まっていく。
愛液が繋がった部分から漏れ出てくる。由樹の体液も混じっているだろう。激しくぶつかる体に合わせて淫らな音が響く。
擦れ合う性器は互いの温もりだけを求めるかのようにひたすら絡み合った。
「依澄さん……もう」
由樹が絶頂間近であることを訴えると、依澄は小さく頷き、腰の動きを速めた。
「……そんなに激しくされると……中に」
「かまいません……どうぞ、そのまま……」
由樹は躊躇する。しかし快感は圧倒的でろくに考える暇さえ与えてくれない。
抜かなければ。でも抜きたくない。
自分の上で乱れ動く依澄の美しい姿に、由樹は魅了され、流されてしまう。
彼女の膣内に出したい。
「ごめん、もう出る」
「はい……」
ペニスがびくびくと脈打ち、ありったけの力で精液を放出する。
するとそれに合わせるように、女陰が締め付けてきた。まるで液を絞り取るかのように由樹に圧力をかけてくる。
「うわ……」
それに応えてさらに下腹部が震える。奥に欲望をぶちまける快楽に、由樹は思わず呼気を漏らした。
射精はしばらく続き、すべてを出し切るのに数十秒を要した。
ようやく波が収まると、依澄は糸が切れたように由樹の胸元に倒れ込んだ。
「い、依澄さん?」
慌てて由樹は受け止める。抱き止めた体は柔らかく、細かった。
依澄は眠っていた。
疲れたのか、小さな寝息を立てている。その様子はまるで普通の女の子のようで、由樹は初めて彼女のことをかわいいと思った。
不意に眠気に襲われた。激しく依澄を抱いたせいだろうか。
由樹はいまだ繋がったままであることに気付き、依澄を起こさないように中から引き抜いた。それから彼女に布団を掛ける。幸い目を覚ます様子はなかった。
依澄の隣で息遣いを感じながら、由樹は穏やかな気分で目を閉じた。
心地よい気分だった。